都内の企業に勤める石川ともえさん(51)は、30代中頃から月経痛緩和や避妊に効果のある低用量ピル「トリキュラー(28錠タイプ)」を15年以上服用。50代に入ってから、血栓症のリスクが低いホルモン補充療法(HRT)に切り替えました(前回の記事はこちら)。2024年2月にHRTに切り替えてから1年が経過し、「相変わらず更年期症状とは無縁」という石川さん。現在に至るまでの体調の変化や、気づいた点などを伺いました(取材:松原渓編集部員)

服用1年目の変化。更年期症状は一切なし!
低用量ピルからHRTに変えて、1年が経ちました。HRTには貼るタイプや塗るタイプもありますが、私はピルを飲み慣れていたこともあり、最初から錠剤タイプで、今も飲み続けています。量は通常の半分の量から飲み始めて、今も変わりません。ただ、体が慣れてきたこともあり、かかりつけのレディースクリニックでの診察が3カ月に1回から半年に一回になり、3カ月に一度は薬の処方箋だけいただく形に。通院の負担は軽くなりました。
当初は、「ジュリナ」錠(エストロゲン製剤)と「デュファストン」錠(黄体ホルモン剤)の2種類を20日間毎朝飲んで、休薬している10日間は出血を起こすための薬を飲んでいました。ただ一度、重い生理痛に似た痛みと胸の張りを感じたことがあり、先生に相談したところ、違う飲み方を提案いただき、服用方法を変えることにしました。
変更後はジュリナ錠を休薬せずに30〜31日間飲み続けて、そこに加えてデュファストンを10日〜11日間飲んでいます。10日間デュファストンを飲んだ後に、生理のような出血が起きます。飲み忘れたり、継続できないことが1番よくないので気をつけていますが、30代からピルを飲むことが習慣になっているので、特に煩わしさは感じません。

「ピルを服用していれば更年期にはならない」と先生に確認して聞いていたので、40代も更年期の症状には悩まされていなかったのですが、50代に入ってからHRTを続けている中で、相変わらず更年期症状は一切出ていません。症状は人によって軽い人もいれば重い人もいるので、ピルからHRTに切り替える時に、先生からは「服用をやめる」という選択肢も提示されました。でも、私は「少しでも更年期を感じたくない!」と思ってHRTに切り替えた経緯があります。今の服用方法は自分に合っていると思いますし、続けていきたいと思っています。
副作用は人それぞれ。自分に合った治療法を
服用していて気になることがあれば、レディースクリニックの先生に半年に一回の診察の時に伝えています。たとえば、飲み方を変えてからは出血が起きなかった月もあり、「自分の生理が終わった(閉経)から出血がなくなったのかな」「更年期に関係しているのかな」と思って、先生に相談したんです。そうしたら、「この薬は生理が起きない時もあるけど、子宮の内膜はちゃんと剥がれていて、出血はその量によるから別に生理が起きなくても心配はないですよ」と言われました。今は飲み方が安定したせいか定期的に出血が起きるようになりましたが、できれば生理は来ない方が楽ですね(笑)。
他に目立った副作用はありませんが、私はピルを飲んでいた時から、胸が張って痛みを感じることがたまにあったんです。今も時々同じような症状が出るので先生に相談したら、「耐えられないような痛みでなければ様子を見ましょう」と言われました。HRTを使用している人の体験談をインターネットで検索してみると、「生理前のように胸が張る症状や、更年期のような症状が復活することもある」と出てきますが、「ホルモンが機能しているということ。若返ったと思って割り切りましょう!」という意見も。それもそうだなと感じ、「私は若いんだ」とポジティブに捉えています。
血栓症のリスクが低いHRT。肌の内服薬との併用で分かったこと
年齢とともにシワやシミ、肝斑などが気になるようになり、治療に効果的と言われているトランサミン(トラネキサム酸)を服用したいと考えていました。ただ、トランサミンは止血効果があるためピルとの併用は難しく、美容クリニックの先生からも「積極的な治療はできない」と言われていたんです。それで、一時期すごく肝斑が濃くなってしまって……レーザー治療なども試したのですが、あまり良くならなかったんです。
ただ、血栓症のリスクが低いHRTに変えてからは、レディースクリニックの先生と美容クリニックの先生にも相談した上で、飲めるようになりました。リスクがゼロになるわけではないので推奨されるわけではなく、最終的には自分の判断ですが、私はそれで肌がかなり改善しました。それは、ピルからHRTに変えて良かった点のひとつです。
とはいえ、美容クリニックに定期的に行けない場合もあるので、オンライン診療をしたんです。そうしたら「HRTやピルの治療をしている人は、トランサミンは飲まない方がいい」と言われてしまいました。結局トランサミンは諦めて、今は美容内服薬で併用してもリスクがない「ユベラ」とか「シナール」などを飲んでいます。ホルモン療法との併用で、リスクがないシミや肝斑の改善方法があればぜひ試してみたいですね。

体験談を伝えて考えるきっかけにしてほしい
2歳下の妹が更年期症状で調子が悪いと聞いたので、「そんなに苦しんでいるならホルモン補充療法を試してみたら?」と話しました。レディースクリニックに相談してみたところHRTの貼り薬を処方され、一時的に改善したそうですが、やめたらまた体がだるくなってしまったそうで……。
私は会社では年上の方ですが、年下の40代の女性も多く、更年期について相談されることがあります。40代後半に差し掛かった知人からも「生理痛がひどすぎて辛い」とか、「生理があったりなかったりして、生理がそろそろ終わるのかな」といった悩みを聞きます。私自身は更年期症状がないと伝えると、理由を必ず聞かれるので、経験談を話すと、「ピルを飲んでおけばよかった」と。40歳を超えてからだと、病院やクリニックによっては医学的なリスクがあり、ピルの服用が推奨されない場合もあるので、「難しいかもしれないけど」とも伝えるのですが……。
とにかく、少しでも調子が悪いと思ったらまずはクリニックに行って相談してみることをオススメします。私自身、日々「今が一番若い」という言葉が沁みるようになってきましたが、更年期や月経痛などの辛さは感じることなく、健康で楽しい毎日を送れていますから。そういう症状に悩まされている皆さんが、自分に合った治療法を見つけられるよう願っています。
【Profile】石川ともえ
転職を経て、現在は都内の企業に週5日以上のペースで勤務する多忙な毎日を送っている。20代で子宮内膜症と卵巣嚢腫を併発し、手術後、30代から低用量ピル「トリキュラー」を服用。50代に入った昨年からはホルモン補充療法(HRT)に変更し、錠剤タイプを服用。エストロゲン製剤「ジュリナ」錠と黄体ホルモン製剤「デュファストン」錠を飲み続けて休薬して出血を起こす「間欠法」から、休薬せず「ジュリナ」錠を飲み続ける「持続法」に変更し、継続している。
【ドクターの見解】
肝斑のできる仕組みはよく分かっていないので、あくまでも私見ですが、肝斑は紫外線から目を守るためにできるのではないかと考えています。プロ野球選手が目の下に黒いシールを貼るのと同じ理由です。そのため、帽子や日焼け止めなどで紫外線を避けることが、肝斑の予防につながる可能性があると思います。
また、肝斑は妊娠中に増えやすいことから、黄体ホルモンの影響が推察されます。低用量ピルに含まれる黄体ホルモンにはさまざまな種類がありますが、やはり男性ホルモン活性のあるもの、特に第3世代のマーベロン、ファボワールを内服されている方に、肝斑のお悩みが多いように感じます。
さらに、肝斑は痩せ型の日本人に多いことから、細胞膜の構成成分であるコレステロールが少ないことが、肝斑のお悩みに関連している可能性があるとも考えています。
これらは、あくまで肝斑について個人的に考えている「可能性」の話です。綺麗でいたいと願う女性のためにも、この分野についても研究したいと思っています。
取材後記(松原 渓)
約半年ぶりにインタビューをさせていただきましたが、石川さんは相変わらず溌剌とされていて、肌もツヤツヤでハリがあり、日々の充実感が伝わってくるようでした。HRTには、石川さんが服用している経口剤の他に「貼る」パッチタイプや「塗る」ジェルタイプの経皮剤があります。経口剤は手軽ですが人によっては肝臓や胃腸に合わない場合もあり、経皮剤は内臓への影響が少ない代わりに、肌に合わないケースもあるそうです。そういう副作用を考えて、自分に合った治療法を選ぶことができるのは他の治療法にはない利点ですね。錠剤タイプにもいくつかの服用方法があり、石川さんのように、合わない場合は変更することもできます。この半年間に軽い副作用も経験されたようですが、今はご自身に合ったペースで、相変わらず更年期症状とも無縁とのこと。
自分のステージに合わせて美と健康を追求し、お仕事でも輝いている姿に憧れます。石川さんのように、ビジネスシーンで活躍する女性がますます増えていくであろうこれからの時代、HRTはさらに注目度が高まりそうです。私自身も、更年期に備えて、かかりつけのクリニックで自分に合った治療法を模索してみたいと実感しました。
更年期と無縁だなんて羨ましいです。
40代のお友達が更年期への対処方を気にしていたので、この石川さんの記事を彼女に教えてあげようと思います。